feature-spec: 機能追加の仕様作成・改訂
既存プロダクトへ機能を足すときの 仕様書 1 本 を作る単機能スキル。成果物は
docs/dev/<対象>/spec.md で、全機能要求に一意 ID(REQ-#)を付ける。この ID は
下流のテスト工程・設計工程・レビュー工程が参照する トレーサビリティ鎖の上流起点 になる。
product-spec との住み分け
| product-spec | feature-spec(本スキル) |
|---|
| 対象 | 新規プロダクトの立ち上げ | 既存プロダクトへの機能追加 |
| 調査の軸 | 競合・類似プロダクト調査(市場に何があるか) | 既存コード・既存仕様との整合調査(自分たちの中に何があるか) |
| 成果物 | 軽量ワンページの仕様ドラフト | REQ-# 契約を持つ spec.md |
| ID 契約 | なし | あり(REQ-# / AC-#) |
新規プロダクトのコンセプト固めなら /product-spec を使う。本スキルは
「動いているプロダクトがあり、そこへ機能を足す」場面専用で、競合調査の枠を
既存資産との整合調査 に置き換えている。
このスキルがやらないこと
- 実装しない。コードの作成・修正はこのスキルの範囲外。
- 基本設計を書かない。モジュール構成・インターフェース・データフローは
/basic-design
の領分。仕様は「何を満たすか」まで、設計は「どう実現するか」。
- テスト成果物を作らない・直さない。
docs/test/<対象>/ 配下は testing スキル群の担当。
改訂モードでテスト成果物の改善提案を 読む ことはあるが、その提案の削除・更新はしない
(testing 側の横断原則が担う)。
- 意味の検証を機械検査に委ねない。曖昧語の排除・記述品質は本スキルの責務(後述)。
このスキルが従う原則
1. 単体動作(graceful degradation)
- 成果物の既定パスは
docs/dev/<対象>/spec.md。<対象> は機能を表す kebab-case の
短い名前(英数字・ハイフンへ正規化)。
- プロジェクト側(
CLAUDE.md / AGENTS.md 等)に成果物の配置規約があればそちらを優先する。
- 任意入力(あれば精度が上がるが、無くても成立する):
docs/dev/definition-of-done.md(完成の定義。受け入れ条件の粒度合わせに使う)
docs/test/<対象>/ 配下のテスト成果物(改訂モードの改善提案の収集元)
- 任意のレビュードキュメント・ユーザーの直接指示
- 任意入力が無いことを理由に中断しない。無い入力は「無い」と明示して先へ進む。
2. 調査優先 + 決定のみ質問
- 事実はリポジトリ調査で埋める。既存の実装・規約・命名・依存関係は、利用者に訊く前に
自分で調べる。
- 利用者にしか決められない判断だけ を
AskUserQuestion(推奨案を先頭)で確認する。
本スキルでは スコープの線引き・要求の取捨選択・優先度・改訂提案の採否 がこれに当たる。
- 流れは 調査 → ドラフト提示 → 承認 → 規約パスへ書き込み。承認前に確定ファイルを書かない。
3. 記述品質は本スキルの責務
ゲート(機械検査)は形式契約しか見ない。曖昧さの排除は書き手の責任 であり、
以下を仕様文から排する:
- 曖昧語: 「適宜」「など」「柔軟に」「必要に応じて」「可能な限り」「基本的に」「等」
- 主語・目的語の省略: 誰が・何に対して・いつ、が読み取れない文
- 検証不能な形容: 「高速に」「使いやすく」「安定して」(→ 数値・条件・観測手段へ開く)
- 定義なしの略号・コードネーム: 初出で正式名称を併記するか平易な表現に開く
各要求は 「この文を読んだ第三者がテストケースを書けるか」 を通過基準にする。
書けないなら分割するか、条件を足す。
4. Progressive disclosure
- 本文は簡潔に保ち、雛形は
references/ に置く。
- テンプレ:
references/template.md(spec.md の雛形)。
- 参考実例: このリポジトリの
docs/dev/shift-left-process/spec.md は本テンプレの先行適用
(dogfooding)であり、実寸の記入例として読める。
REQ-# 契約(下流が依存する形式)
この契約は本スキルの成果物が満たすべき 形式 であり、下流工程の機械検査が検証する。
- 機能要求:
### REQ-01: <名称> の見出し + 箇条書き。番号は 2 桁ゼロ埋め、
一意・連番・欠番なし。1 要求 1 見出しで、複数の要求を 1 見出しに詰めない。
- 受け入れ条件:
| ID | 対象 | 条件 | のテーブル。ID は AC-01 形式、
対象列に必ず REQ-# を書く(1 つの AC が複数要求にまたがるなら REQ-09/10 のように併記)。
- 非機能要求:
NFR-01 形式。機能要求と ID 空間を分ける。
- ID は下流の鎖の起点:
REQ-# → テスト条件 TC-# → テストケース CASE-# → 欠陥 D#。
下流成果物が REQ-# を参照するため、既存 ID の意味変更・削除は下流の参照を壊す。
手順
引数は <対象名>。省略されたら docs/dev/ 配下の既存ディレクトリを一覧して選択を求めるか、
新規なら一言で対象を確認する。
docs/dev/<対象>/spec.md の存在で 作成モード(無い)と 改訂モード(ある)に分岐する。
作成モード
手順 1: 要求を固める(grilling 連携)
grilling スキルを呼び出し、渡された対象名・依頼内容を起点に対話で要求の芯を固める。
呼び出し時の brief には、少なくとも以下のトピックを必ずカバーすることを明記する:
- 解く課題(今どう困っていて、この機能で何が変わるか)
- 対象ユーザー・利用シーン(既存プロダクトの誰が使うか)
- 既存の代替手段(今どう回避しているか。運用回避・手作業も含む)
- 満たすべき条件(何が成立したら「できた」と言えるか = 受け入れ条件の種)
- やらないこと(スコープ外の宣言。ここを詰めないとスコープドリフトの原因になる)
grilling の対話で合意に達するまで次の手順へ進まない。合意内容はメインセッションが
「要求要約」として簡潔にまとめて引き継ぐ(grilling 自体はドキュメントを生成しないため)。
手順 2: 既存資産との整合調査
要求要約をもとに、リポジトリを調査して以下を洗い出す。利用者に訊く前に自分で調べる。
- 重複機能: 同じ課題を既に解いている実装・設定・ドキュメントは無いか。
あるなら「新設ではなく拡張」が正解の可能性を提示する。
- 影響範囲: 変更が波及するモジュール・呼び出し元・設定・公開契約(API・CLI 引数・
ファイル書式)。破壊的変更になる箇所を特定する。
- 既存規約: 命名・配置・エラーハンドリング・ログ・テスト配置の慣習。新機能はこれに従う。
- 既存仕様との矛盾: 既存の仕様書・設計書・README と衝突する要求が無いか。
矛盾があれば 仕様を書く前に 利用者へ提示して解消する。
調査結果は要約して提示する(ファイル一覧の羅列ではなく、判断に効く所見にまとめる)。
手順 3: 仕様の作成
references/template.md の構成でドラフトを作り、承認後に
docs/dev/<対象>/spec.md へ書き込む。必須セクションは
目的 / スコープ / 機能要求 / 非機能要求 / 受け入れ条件 / スコープ外 の 6 つ。
- 機能要求は
REQ-# 契約に従って付番する。
- 受け入れ条件は各行が
REQ-# を参照する。要求に紐づかない AC を作らない。
- 「スコープ外」は空にしない。検討して落としたものを明示的に書く(後の議論の再燃を防ぐ)。
- 原則 3 の記述品質を書き終わりに自分で通す(曖昧語の検索は機械的にできる)。
手順 4: セルフ機械検査
後述の「セルフ機械検査」を実行し、NG があればその場で直してから完了宣言する。
改訂モード
既存の docs/dev/<対象>/spec.md を検出したら改訂モードに入る。
手順 1: 未反映の改善提案を収集
以下の入力源を横断して、まだ仕様へ反映されていない 指摘・提案を集める。
入力源は疎結合で、どれか 1 つでもあれば成立する:
docs/test/<対象>/ 配下のテスト成果物の「改善提案」セクション
(test-analysis.md / test-design.md / test-plan.md 等)
docs/test/<対象>/test-review-*.md の「未解消の指摘」
- ユーザーの直接指示(この会話で渡された変更要望)
- 任意のレビュードキュメント(パスを渡されたもの)
既に現行 spec.md へ反映済みの提案は候補から外す(二重反映を防ぐ)。
手順 2: 取捨選択
収集した提案を一覧で提示し、AskUserQuestion(推奨案を先頭)で採否を確認する。
提案が多いときは論点ごとに分けて訊く。各提案には「反映すると REQ-# がどう変わるか」
(追加 / 条件の変更 / 削除)を添える。
手順 3: 反映
採用された提案だけを spec.md へ反映する。
REQ-# は追番。既存の最大番号の次から採番する。
- 既存 ID の意味を変えない。「REQ-03 の内容を別物に差し替える」ような改訂は下流の
TC-# の参照先を silently 壊す。内容が別物になるなら 新しい ID を採る。
- 削除は下流破壊。要求を落とすときは利用者へ次を警告した上で行う:
既存のテスト条件がその
REQ-# を参照していると 孤児参照 になり、
セルフ機械検査(下流参照の破壊検査)で FAIL する。落とすなら下流成果物側の更新が要る。
- テスト成果物側の改善提案の 削除はしない(testing スキルの責務)。反映したことは
報告で伝え、テスト成果物の掃除は該当 testing スキルの再実行に委ねる。
手順 4: セルフ機械検査
作成モードと同じ(下記)。
セルフ機械検査
終了前に、test-review の決定論スクリプトを spec モードで自分に対して実行する。
<review-check.sh のパス> spec docs/dev/<対象> [docs/test/<対象>]
- 第 2 引数は開発ドキュメントのディレクトリ(
docs/dev/<対象>)。
- 第 3 引数のテストドキュメントディレクトリは省略可(省略時は
docs/dev/<対象> から
docs/test/<対象> を自動導出する)。
- 検査内容: 必須セクションの存在 /
REQ-# の一意性・形式・重複欠番 /
受け入れ条件の空欄と REQ-# 紐づけ / 下流参照の破壊検査(既存 test-analysis.md の
TC-# が参照する REQ-# を仕様改訂で消していないか = 孤児参照検出)。
スクリプトの探索
次の順で探し、最初に見つかったものを使う:
- 作業リポジトリ内の
skills/testing/test-review/scripts/review-check.sh
- install 済み testing-skills プラグインの同一パス
(
~/.claude/plugins/ 配下等。プラグインの配置は環境で変わるため実在確認をしてから使う)
どちらにも無ければ検査をスキップし、その旨を利用者へ明示する(例:
「review-check.sh が見つからないためセルフ機械検査をスキップした。testing-skills を
install するか、/test-review <対象> spec で別途ゲートを通してほしい」)。
スクリプトの不在を理由に仕様作成を失敗させない(原則 1: graceful degradation)。
NG が出たとき
NG は形式契約の違反であり事実なので、利用者判定を待たずにその場で直す。
直したら再実行して NG ゼロを確認する。SKIP(突合先の成果物が無い等)は問題ではない。
終了条件
以下を全て満たしたら 「<対象> の仕様は完了」と明言 して閉じる。満たしていない項目が
あれば、何が残っているかを列挙して先へ進めない。
- 作成モードなら grilling で要求合意済み・整合調査済み(手順 1・2)。
改訂モードなら提案の収集と取捨選択が利用者確認済み(手順 1・2)。
docs/dev/<対象>/spec.md が規約パスへ書き込み済みで、必須 6 セクションを持つ。
- 全機能要求に一意な
REQ-# が付き、受け入れ条件の各行が REQ-# を参照している。
- セルフ機械検査が NG ゼロ、またはスクリプト不在によるスキップを利用者へ明示済み。
完了後の次の一手として、以下を 提案するに留める(本スキルは実行しない):
- 正式ゲート:
/test-review <対象> spec
- テスト計画・分析:
/test-plan <対象> / /test-analyze <対象>
- 基本設計:
/basic-design <対象>
用語
- 要求(requirement): プロダクトが満たすべきこと。本スキルでは
REQ-# で一意識別する。
- 受け入れ条件(acceptance criteria): 要求が満たされたと判断する条件。
AC-#。
- 孤児参照(orphan reference): 下流成果物が参照している ID が上流から消えた状態。
- トレーサビリティ(traceability): 要求・テスト条件・ケース・欠陥の間の対応関係。