黒地のMarpテーマ(minorun-dark)でスライドを組むときのデザインバランスと検査。余白の測り方、縦のバランス、配色の決め方、表・コード・補足ボックスの確定デザイン、Marp固有の罠、書き出し後の検査手順。「スライドのバランスを整えて」「色を変えて」「余白が変」「黒地のテーマで作って」と言われたら読む。
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人前で話す登壇・講義スライドのストーリーの組み方。つかみ、中扉、段階的な開示、見出しの文体、締め方、尺の見積り。「登壇スライドを作って」「LTの資料」「講義資料の構成を考えて」と言われたら、書き始める前に読む。
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登壇スライドは読ませる資料ではない。話し手が話しやすい紙芝居であり、聞き手が「いまどの話のどこにいるか」を見失わないための道具である。投影して口頭で補う前提なので、配布資料に必要な網羅性や注記は要らない。
この型は、作者(みのるん)が数年分の自作デッキを読み返して抽出したもの。AIエージェントにスライドを書かせると体裁は整うのに中身が薄くなりがちで、その原因の大半は下に挙げる規則のどれかを外していることにある。
テンプレートの型へ内容を流し込む作り方はしない。「アイコン+太字の見出し+1行の説明」のカードを3枚並べた構成を全ページで繰り返すと、体裁は整うのに何も伝わらない資料になる。
概念の定義から始めない。作者の人気デッキ21本を調べたところ、定義から始まるものは1本もなかった。型は4つある。
自己紹介の次は、聴衆への問いかけのスライド2つから入る。「使ってますか?」の次に「作ってますか?」のように、2つ目で手が減る問いを置くと、そこが本編の入口になる。海外のイベントや英語のデッキでも同じ。
技術カタログの章立てをしない。聞き手がいま抱いたはずの疑問を中扉に書き、次の技術が必然として登場する形にする。
中扉には守る条件がある。
説明は抽象 → 具体 → 比喩の3段で進める。比喩は身近で大胆なものがよい(LLMを国民的アニメのロボットに、実行環境を「使い捨ての仮想PC」に喩える)。比喩を出したら、次のスライドではその比喩から製品を導く。比喩の直後に別の切り口の定義を置くと、つながりが切れる。
主張と実例は隣に置く。あいだに別の話題を挟むと、説得力の出る例までが遠くなる。雑務の例を主役にしない。中扉で「例えば」と明示し、本質のメッセージを上位に置く。
情報を1つずつ足して認知負荷を下げるのが、この型の中心にある。結論や種明かしを先に置くと、その先の面白さが消える。
この規則は、スライドを作るときだけでなく、レビューでスライドの追加を提案するときにも当てはまる。
資料全体で、次のどれかを最低2〜3か所に入れる。ゼロだと優等生的で単調になる。
章が3つ以上あるなら、対応表やステップバーを章の変わり目に再掲して現在地を示す。
型は品質の下限を上げるが、上限は作らない。骨格や演出をなぞっても、ネタの面白さと実話の重みは生成できない。体験談やあるある系の資料は、先に話し手の実話を集めてから組む。この型の正しい使い道は、話し手が中身を出した後の構成チェックと演出の提案である。
git rebase で履歴を整える」は「変更の記録を整理する」にする。名前を知らない人にとって、名前は情報にならない| 項目 | 規則 |
|---|---|
| 1スライドの量 | 見出し1つと本文3〜4行。これ以上載せない |
| 見出し | 主張の一文。めくった瞬間に何の話か伝わること |
| 本文 | 箇条書き3〜4項目、各1〜2文。階層は1段。4行になったら2スライドに割るか、意味の切れ目で改行する |
| 強調 | 1スライドに1か所まで。デッキ全体では本文2〜3スライドに1か所 |
| 記号 | ダッシュ(――)と全角コロンの多用を避ける |
| 図 | 1スライドに1つだけ、大きく。同じ見出しで「図だけの1スライド」を作ってよい |
| 表 | 2〜3列の単純なもの |
| 見出しの行数 | 1行に収める。折り返すなら言い換える |
図を主役にするスライドでは、テキストは見出しと導入の1行までにする。結論や応用は口頭で言えば済む。図の下に補足を2行足すと、図が縮んだうえ本文も詰まって、どちらも中途半端になる。文字を主役にするスライドでは、図は挿絵の大きさに留める。
見れば分かることを小さい文字で足さない。判定は「画面を見れば分かるか、今日の聴衆の判断が変わるか」の1つである。
上の表の「強調は1スライドに1か所」とは別枠で、新しく教える用語や機能名は、地の文での初出1回を強調色の太字にする。
全部を敬体に揃えても、全部を常体に揃えても、機械が書いた資料に見える。常体、敬体、体言止め、問いかけ、「!」、口語の独白が入り混じり、その落差がテンポを作る。
1スライドごとに、どの型で書くかを先に決めてから文字にする。素直に書いてからあとで直す、という順序は取らない。敬体で発想した文を常体へ付け替えることになり、それ自体が不自然さの原因になる。
| そのページの役割 | 見出しの型 | 例 |
|---|---|---|
| 図、コード、スクリーンショットが主役 | 体言止めの短いラベル(3〜6字でよい) | こうなりがち/アーキテクチャ例 |
| 主張、気づき | 常体の言い切り | 令和のAIエージェントは3行で書ける |
| 驚き、良いニュース、転換 | 「!」で振り切る | デフォルトでストリーミング対応! |
| 聴衆の心の声 | 口語の独白 | よし、エージェント書けた! |
| 想定反論への切り返し、宣伝、締め | 敬体で落とす | …人生そんなに簡単じゃないんです |
| 次のスライドへつなぐ | 途中で切って引っ張る | 技術的な下地は十分整ったが… |
| 用語の導入 | 説明句と「用語」 | AIに記憶をもたせる「メモリー」 |
| 中扉の問いかけ | 「〜の?」 | 何を用意すればいいの? |
常体の言い切り全般が悪いわけではない。引っかかるのは次の2系統だけ。
敬体で発想した文の語尾だけを常体へ付け替えたもの。「割に合いません」を「割に合わない」へ、「育ちました」を「こうして育った」へ切り替えた文がこれに当たる。常体にしたくなったら語尾を切らず、体言止め、勧誘形(〜しよう)、「!」のどれかへ作り直す。
口語の砕けた語尾。「〜てる」(い抜き)、「〜ばいい」、「〜んです」は、機械が親しみやすさを演出するときの定番である。体言止め、「〜しよう」、「OK」へ置き換える。
rg -n '^# .*(てる|ばいい|んです)$' deck.md # 0件が正
不自然さは語彙ではなく均一さとして出る。1スライドずつ見ると自然な日本語なので、通しで並べるまで気づけない。rg -n '^# ' deck.md で一覧にして実測する。作者の手作りデッキ2本(各57〜58スライド)の値は次のとおり。
| 指標 | 手作りの実測 | 外しているときの値 |
|---|---|---|
| 「!」を含むスライド | 7〜20% | 1% |
| 「?」を含むスライド | 10〜15% | 7% |
| 敬体のスライド | 10〜12% | 1% |
| 最短の見出し | 3〜6字 | 全スライドが15〜24字に揃う |
型の反復も同時に数える。読点でタメて短く落とす二部構成(「覚える言葉は、この3つだけ」)、接続詞で頭を揃える見出し(しかも/実は/ちなみに)、コロン見出しの連発(「品質:」「量:」)は、3スライド以上続くと整理癖の署名になる。
ドキュメントの見出しルールをそのまま持ち込まない。READMEでは見出しを機能名の名詞に揃え、効能の売り文句を消すのが正しい。スライドでは逆で、聞き手を乗せるのが仕事なので「簡単」「〜するだけ!」は正当な要素になる。READMEの見出しは機能を探すための名札で、スライドの見出しは聞き手を次の話へ連れていく一言である。
型の反復は本文にも出る。出やすいのは「Xすると、Yになります」「Xなら、Y」「Xしたら、Y」という条件+読点+帰結の形で、1文ずつは自然なので書いている最中には気づけない。1スライドに3つ並んだら、言い切り・体言止め・問いかけを混ぜる。箇条書き3行が全部「〜、〜」の同じ拍になっているときも同じ。
tools/check-ai-smell.py が、この型の反復と、決め台詞・過大な効能・地の文の終助詞などの定番の型を数える。既定では git の HEAD 版と比べて変わったスライドだけを見るので、既存のスライドを巻き込まず、新しく書いた文にだけ当たる。
python3 tools/check-ai-smell.py deck.md # HEAD から変わったスライドだけ
python3 tools/check-ai-smell.py deck.md --all # 新しいデッキは全スライド
結論やまとめを入れる箱は、続けて使うほど目立たなくなる。
補足のコラムのような色付きの箱も、デッキ全体で数か所に絞る。補足を見つけるたびに箱へ入れると、どのページも同じ見た目になる。吹き出しの直下と表の直下には置かない。形の似た濃い図形が縦に並んで重く見える。
同じテーマのパートが過去のデッキにあるなら、新しい資料はその組み合わせで作る。部品はたいてい既に存在していて、正しく組めばすぐ終わる仕事を、勝手な創作が何巡ものレビューに変える。
再演の案件では、直前の回の構成メモを読むまで構成を提案しない。却下された案とその理由は、たいてい次の回にもそのまま効く。再演の依頼は「評判の良かったものをもう一度」なので、枠組みの作り替えは依頼の意図に反する。差を作るのは構成ではなく、事実の鮮度とスライド単位の入れ替えである。地方での開催は、聴衆の大半が初めて聞く前提で組む。
同じ元ネタから2会場ぶんのデッキが並行して育つと、項目ごとに新旧が逆転する。日付が後のほうが新しい、とは決めない。数字、図、言い回し、構成の1つずつを両方で突き合わせる。
派生のデッキで直したことを正本へ戻すときは、文面だけでなく構成(外した枚・動かした枚)も戻す。話し手の判断で外した枚と、章を寄せ直した並びは正本へ戻し、会場の尺で外しただけの枚は戻さない。文面だけ戻して構成を残すと、次の派生が古い並びから作られ、削ったはずの枚が復活する。尺に合わせて枚を削る抜粋版を作る前に、正本と直近の厳選版を見比べ、構成のずれが残っていないかを確かめる。
複数のデッキから使えそうな枚を集めて繋ぐと、脈絡のない継ぎはぎになる。土台を1本に決め、そこから落とす方向だけで組む。
同じテーマでも、聞き手がすでに持っている道具と導入状況で、要る枚は変わる。導入前の組織に向けた枚(導入の手続き、製品の選び方、準備の手順)は、導入済みの組織には要らない。逆に導入済みの組織には、すでに使っている道具との使い分けを足す。
構成案を出す前に、全スライドを「その時点の聞き手が、手元の道具でできる話か」で判定した表を作る。
足したスライドは、1ページずつ見れば自然でも、通しで見ると浮く。既存のスライドが持っている癖(強調の入れ方、具体例の置き方、話題の担当範囲)が抜けるためである。足し終えたら、足した分と既存の分で次の3つを比べる。
rg -n して数える既存の文を「元からある」と判断する前に、誰が書いたかを履歴で確かめる。デッキの中には、話し手が書いた文と、過去にエージェントが書いた文が混ざっていて、見ただけでは区別できない。
git log --format='%h %ad %s' --date=short -S'<その文の一部>' -- deck.md | tail -3
エージェントが書いた文だと分かったら、派生元のデッキも同じように直す。直さないと、次の登壇へそのまま乗り続ける。
1枚を直す前に、前後2〜3枚を並べた画像で見る。1枚ずつなら問題なくても、並びで崩れることが多い。
聞き手が手を動かす講義やハンズオンは、登壇のデッキより説明の責任が重い。画面が1つ違うだけで、参加者はその先へ進めなくなる。
書いたら、全ページを機械で拾う。
rg -n '^# .*、|^# .* |手が止ま|走|しよう。|貼ります' deck.md
border-width: 22px 0 0 24px で上辺だけ色を付ける)。左下だと、下の本文から生えているように見える| か ![ か」で全ページを数えるよく読まれるタイトルは、読者の「遅れているかも」という不安を救う。「やさしい◯◯入門」「◯◯をやさしくおさらい」「まだ間に合う!」「今さら聞けない!?」。上から教えず、遅れても大丈夫と請け合う。
スライドは持ち時間に収まって初めて成立する。構成が固まったとき、スライド数が5以上増減したとき、提出前、前日の4回、着地時間を出す。
F="deck.md"; awk '/^---$/{n++} /_class: crosshead/{c=1} /^# /{printf "p%02d %s %s\n", n-1, (c?"[中扉]":"[本文]"), $0; c=0}' "$F"
単価は客層と枠の長さで変わる。下は作者の実測で、自分の実績が取れたら置き換える。
| 場 | 本文1スライドあたり |
|---|---|
| 5分のLT | 約30秒 |
| 10分のLT | 約16秒(中扉を含む全スライドで割った値。35枚前後で組む) |
| 15分前後の短い枠、スクリーンショット主体 | 約29秒 |
| 開発者向けカンファレンス(40分前後) | 約37秒 |
| オンライン配信(一般向け、40分前後) | 約37秒 |
| 展示会、非エンジニア向け | 約46秒 |
前提の説明を飛ばせるかどうかが単価に効く。短い枠では前置きも言い直しも消えるので速くなる。総スライド数に一律の秒数を掛ける計算は、本文と中扉を混ぜるぶん必ず遅い側へ外れ、要らない削減を提案することになる。
枠が短いほど単価は下がる。20分以下の枠に、45分枠の単価を当てない。長い枠の単価は前置きと言い直しを含むので、短い枠では大きく過大に出る。見積りを出す前に、同じ素材を別の尺で話したデッキの枚数と並べ、枠の長さに比例して枚数が増えているかを見る。余った時間を「口頭で厚くする」で埋める見積りにしない。話す中身が決まっていない時間は見積りではない。
パート単位でざっくり配分すると、見積りが膨らむ。1枚ずつ積み上げる。
PDFへ書き出して1ページずつ見る。
tools/check-ai-smell.py を当てて、NGが0件か見た目の検査は slide-design-dark と tools/ を使う。
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黒地のMarpテーマ(minorun-dark)でスライドを組むときのデザインバランスと検査。余白の測り方、縦のバランス、配色の決め方、表・コード・補足ボックスの確定デザイン、Marp固有の罠、書き出し後の検査手順。「スライドのバランスを整えて」「色を変えて」「余白が変」「黒地のテーマで作って」と言われたら読む。
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登壇スライドに載せる図・構成図・挿絵の作り方。情報量の絞り方、SVGの描き方、文字サイズの下限、挿絵の置き方、書き出し後の検査。「図を作って」「構成図を描いて」「図が見づらい」「挿絵を入れて」と言われたら読む。
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