AIが生成しがちな「いかにもAIっぽい」日本語の定型表現・水増し・空疎な形容を取り除き、読者の信頼を損なわない自然な文章に直す。記事・原稿・プレスリリース・告知・SNS投稿など、AIの支援を受けて書いた文章を公開前に点検するときに使う。「AI臭を消したい」「文章が機械っぽい」「人が書いたように直したい」などの依頼で使う。
gakujutsu-bunsho
学術的な文章執筆・研究設計・学術コミュニケーションの作業を支援する。論文の執筆、文献レビュー、IMRaD構成、研究費(科研費・JST・AMED等)申請、引用管理、査読対応、オープンアクセス(OA)の選択、プレプリント投稿、ORCID/DOI等の識別子、CRediT役割分担、事前登録、生成AI(LLM)利用の開示などを扱う。
研究者・大学院生のほか、調査報道で学術論文や研究手法を読み解き引用する記者にも使う。「論文を書く」「研究計画を立てる」「文献レビュー」「査読コメントへの返信」「科研費の申請書」などの依頼で使う。
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学術文章と研究方法論
学術的な執筆・研究設計・学術コミュニケーションのための体系的な手順とテンプレート集。 研究者・大学院生に加え、調査報道で学術論文を読み解き、研究者に取材し、エビデンスを記事化する記者の利用も想定している。
注意:研究費の様式・金額・期限、OA義務化方針、各誌の投稿規程やAI利用ポリシーは頻繁に改定される。重要な数値・締切・要件は、提出前に対象機関・対象誌の最新案内で必ず確認すること。本スキルは一般的な手引きであり、法的助言・各機関の公式見解ではない。
記者向けの使いどころ(先に整理)
## 調査報道で学術文献を扱うときの要点
- 一次情報にあたる:報道発表やプレスリリースではなく、論文本体(J-STAGE・出版社サイト・プレプリント)を読む。
- 査読の有無を確認する:プレプリントは査読前。「査読済み」と「投稿前原稿」を記事で混同しない。
- 撤回・訂正を確認する:Retraction Watch、出版社の正誤表(Erratum/Corrigendum)を確認してから引用する。
- 利益相反(COI)と資金源を確認する:論文末尾のCOI開示・資金提供(funding)欄を読む。
- 効果量とサンプルを見る:p値の有無だけでなく、効果量・標本数・対照群の有無を確認する。
- 「相関」と「因果」を取り違えない:観察研究は因果を断定できないのが原則。
- 専門家に当てる:論文著者だけでなく、利害関係のない第三者の研究者にも見解を求める。
- DOIで永続リンクする:記事や社内資料では、URLでなくDOI(doi.org/…)で参照する。
研究設計の基礎
リサーチクエスチョン(問い)の組み立て
## 問いの磨き方
### FINER基準
- **F**easible(実行可能):実際にやり切れるか(時間・資金・データ・倫理承認)。
- **I**nteresting(興味深い):その分野にとって意味があるか。
- **N**ovel(新規):新しい知見を加えるか。
- **E**thical(倫理的):倫理的に実施できるか。
- **R**elevant(適切):現実の問題に答えるか。
### 問いの類型
| 類型 | 目的 | 例 |
|------|------|-----|
| 記述的 | 現象を記述する | 「Xにはどんな特徴があるか」 |
| 比較的 | 群・条件を比べる | 「XはAとBでどう違うか」 |
| 相関的 | 関係を調べる | 「XとYに関係はあるか」 |
| 因果的 | 因果を確かめる | 「XはYを引き起こすか」 |
| 探索的 | 仮説を生む | 「Xを説明しうる要因は何か」 |
### 問いを絞り込む
広い問い → 段階的に具体化する。
第1案:「SNSは政治にどう影響するか」
第2案:「X(旧Twitter)の利用は政治的分極化にどう影響するか」
第3案:「党派的アカウントへの接触は、日本の成人の政治的態度の分極化にどう影響するか」
第4案:「思想的に同質なタイムラインへの接触が増えると、政治関心の高い18〜35歳の感情的分極化は強まるか」
文献レビューの戦略
## 体系的な文献検索
### 分野別のデータベース(日本+国際)
- **国内横断**:CiNii Research(論文・データ・プロジェクト横断)、J-STAGE(国内学術誌の本文)、
国立国会図書館サーチ/NDLデジタルコレクション、IRDB(学術機関リポジトリDB)、Jxiv(国内プレプリント)
- **多分野(国際)**:Web of Science、Scopus、Google Scholar、Dimensions、OpenAlex(無料)
- **社会科学**:JSTOR、ProQuest、SSRN、社会科学系の機関リポジトリ
- **医学・健康**:PubMed/MEDLINE、医中誌Web(日本語医学文献)、Cochrane Library、CINAHL
- **教育**:ERIC、国立教育政策研究所の刊行物
- **法律**:D1-Law、LEX/DB、判例秘書、各誌の論文索引
- **理工・物理・数学・CS**:arXiv、INSPIRE-HEP、IEEE Xplore、ACM Digital Library
### 検索式のテンプレート
1. **キーワード抽出**:問いから主要概念を取り出す。
2. **同義語の展開**:概念ごとに日本語・英語の同義語を並べる。
3. **論理演算子で組み合わせる**(AND / OR / NOT)。
例:「SNS 政治的分極化」
概念1:SNS
- OR:Twitter/X、Facebook、Instagram、「ソーシャルメディア」、「ソーシャルネットワーキングサービス」、social media
概念2:政治
- OR:党派、イデオロギー、選挙、政治的態度
概念3:分極化
- OR:分断、過激化、polarization、division
組み合わせ:
(Twitter OR Facebook OR "social media" OR ソーシャルメディア)
AND (政治 OR 党派 OR political OR partisan)
AND (分極化 OR 分断 OR polarization)
※ 日本語DBでは表記ゆれ(全角/半角、カタカナ/英字、送り仮名)に注意。
CiNii・J-STAGEは英語論文も拾えるため、和英両方の検索式を試す。
### 採否(包含/除外)基準
基準を明記して再現可能にする:
- 出版年の範囲:[X年〜現在]
- 言語:[日本語のみ/日英/多言語]
- 文献種別:[査読論文のみ/プレプリントも含む/紀要を含むか]
- 地理的範囲:[国内/特定国/全世界]
- 方法論:[すべて/特定の手法に限定]
### 検索の管理
- 検索式を保存して再実行できるようにする
- 結果を文献管理ソフトに書き出す
- 各段階のヒット件数を記録する(PRISMAフロー図に流用できる)
- 各検索の実施日を記録する
引用・文献の管理
# 文献管理ソフト(Zotero 等)と連携する際のパターン
# 引用スタイルの例(学会ごとに投稿規程で指定される)
CITATION_STYLES = {
'apa7': 'American Psychological Association 第7版(心理・教育・社会科学で広く使用)',
'chicago': 'Chicago Manual of Style 第17版(人文・歴史)',
'ieee': 'IEEE(工学・情報)',
'vancouver':'Vancouver(医学・生命科学)',
'sist02': 'SIST 02(参照文献の書き方/日本の旧・科学技術情報流通技術基準。'
'現在は各学会規程やJIS X 0807等が実務の基準)',
}
# BibTeX エントリのテンプレート
BIBTEX_ARTICLE = """
@article{{{citekey},
author = {{{author}}},
title = {{{title}}},
journal = {{{journal}}},
year = {{{year}}},
volume = {{{volume}}},
number = {{{number}}},
pages = {{{pages}}},
doi = {{{doi}}}
}}
"""
# 文脈別の引用パターン(和文)
CITATION_CONTEXTS = {
'概念の導入': "著者(年)によれば、……",
'主張の裏づけ': "……であることが示されている(著者, 年; 著者, 年)。",
'対比': "著者(年)はXと論じるが、著者(年)はYと主張する。",
'手法の参照': "著者(年)が開発した手法に従い、……",
'直接引用': "著者(年)は「(原文ママ)……」と述べている(p. X)。",
}
論文の構成と執筆
IMRaD構成(実証系論文)
## 標準的な論文の各節
### 要旨(Abstract、おおむね150〜300語/和文は400字前後の指定が多い)
- 背景(1〜2文)
- 目的(1文)
- 方法(2〜3文)
- 結果(2〜3文)
- 結論(1〜2文)
### 序論(Introduction)
**漏斗(ファネル)構造:**
1. 広い文脈 — なぜこのテーマが重要か
2. 焦点の絞り込み — 具体的な問題は何か
3. ギャップの指摘 — 何がまだ分かっていないか
4. 問い/仮説 — 何を検証するか
5. 貢献の予告 — この研究がなぜ意味を持つか
### 文献レビュー(Literature Review)
**時系列ではなくテーマ別に整理する:**
1. テーマ1:主要な知見・論争・空白
2. テーマ2:主要な知見・論争・空白
3. テーマ3:主要な知見・論争・空白
4. 統合:各テーマが自分の研究とどうつながるか
### 方法(Methods)
**再現性テスト:** この節だけを読んで、別の研究者が同じ研究を再現できるか。
含めるもの:
- 対象・標本(誰を、どう選び、Nはいくつか)
- 材料・測定(どの尺度・機器か、その妥当性)
- 手続き(実際に何を、どの順で行ったか)
- 分析方法(統計手法、質的分析の手順)
- 倫理的配慮(倫理審査の承認、インフォームド・コンセント)
### 結果(Results)
**報告し、解釈しない:**
- 知見を系統的に提示する
- 複雑なデータは表・図で示す
- p値だけでなく効果量も報告する
- 各問い/仮説に対応づけて述べる
### 考察(Discussion)
**逆漏斗(リバースファネル)構造:**
1. 主要な知見の要約
2. 先行研究の文脈での解釈
3. 理論的含意
4. 実務的含意
5. 限界(リミテーション)
6. 今後の研究の方向
7. 結論
学術的な文体
## 表現の作法
### 文体・時制(英語論文の場合)
| 節 | 時制 | 例 |
|----|------|-----|
| 要旨 | 過去(方法・結果)/現在(結論) | "We found... This suggests..." |
| 序論 | 現在(確立された知見) | "Research shows..." |
| 方法 | 過去 | "Participants completed..." |
| 結果 | 過去 | "Analysis revealed..." |
| 考察 | 現在+過去 | "These findings indicate... We found..." |
和文では時制の使い分けは弱いが、**確定した事実は「である」、推論は「と考えられる」「示唆される」**と書き分ける。
### 言い切りすぎない(ヘッジング)
過大主張を避ける表現:
- 「……を示唆する」(×「……を証明する」)
- 「……と関連する可能性がある」(×「……を引き起こす」)
- 「結果は……を示す」(×「結果は決定的に……を実証する」)
- 「一つの可能な説明として……」(×「唯一の説明は……」)
### 機能別の接続表現
**追加:** さらに、加えて、また
**対比:** しかし、一方で、これに対して、にもかかわらず
**因果:** したがって、その結果、ゆえに
**例示:** 例えば、具体的には、とりわけ
**順序:** まず、次に、続いて、最後に
**要約:** 要するに、総じて、以上より
### 段落(パラグラフ)
各段落は:
1. 主題文(トピックセンテンス)で始める
2. 一つの主旨に絞る
3. 裏づけの根拠を含める
4. 前後の段落とつなげる
5. 分野により目安は異なるが、長すぎる段落は分割する
よくある執筆上の問題
## 避けたい書き方
### 冗長
× 「結果が……を示しているということは重要であると言える」
○ 「結果は……を示す」
× 「……を調査するために」
○ 「……を調べるため」
### 弱い動詞・受動の乱用
× 「本研究は研究者によって行われた」
○ 「研究者は本研究を行った」
× 「有意な差が見いだされた」
○ 「我々は有意な差を見いだした」(誌の規定で一人称可否を確認)
### あいまいな表現
× 「いくつかの研究が示している」
○ 「3件の研究(著者, 年; 著者, 年; 著者, 年)が……を示した」
× 「結果は有意だった」
○ 「結果は統計的に有意だった(p < .05, d = 0.45)」
### 不要な専門用語
- 専門用語は初出で定義する
- 同じ精度なら平易な語を選ぶ
- 読み手の専門性に合わせる(記者向け解説なら特に)
### 引用の問題
× 孫引きを明示しない
○ 「(著者, 年。著者, 年に引用)」
× 並べるだけの羅列引用
○ 同じ論点はまとめ、異なる論点は区別して引用する
査読対応と改稿
査読者への返信
## 回答書(レスポンスレター)のテンプレート
編集者ならびに査読者の先生方へ
拙稿「[題目]」(原稿番号:[番号])について、有益なご指摘をいただき御礼申し上げます。
すべてのコメントを検討し、原稿を修正いたしました。以下、各コメントに逐一お答えします。
---
## 査読者1
### コメント 1.1
[査読者のコメントを引用または要約]
**回答:**
[何をどう対応したかの説明]
**修正箇所:**
[具体的な変更箇所をページ・行番号とともに引用]
「修正後の本文……」(p. X, 行 XX-XX)
### コメント 1.2
[各コメントについて同様に続ける]
---
## 査読者2
[同じ形式]
---
これらの修正により本稿は大きく改善されたと考えております。
貴誌への掲載にふさわしいものとご判断いただければ幸いです。
[著者一同]
批判への向き合い方
## 査読コメントの種類と対応
### 必ず対応すべき
- 方法論上の問題
- 先行研究の欠落
- 不明瞭な記述
- 論理の飛躍
- 統計の誤り
### 慎重に交渉する
- 追加分析の要求
- 構成の組み替え提案
- 解釈の相違
### 根拠をもって反論してよい
- 研究の範囲外の要求
- 論旨の誤読
- 査読者間で矛盾する助言
### 返答の言い回し
**同意:** 「ご指摘に感謝いたします。[対応]を行いました。」
**部分同意:** 「貴重なご指摘です。[妥当性を認めつつ]、本稿では[方針を説明]いたしました。一方で[部分的な対応]を加えました。」
**敬意ある反論:** 「重要な点をご指摘いただきました。慎重に検討しましたが、[理由]と考えます。この点についてご理解いただけますと幸いです。」
研究費(外部資金)の申請
米国のNSF/NIHを原典とするが、ここでは日本の主要制度に再構成する。様式・経費区分・締切は公募要領で毎年変わるため、必ず最新の公募要領とe-Rad等の様式で確認すること。
## 日本の主な競争的資金
- **科研費(科学研究費助成事業, JSPS)**:基盤研究(S/A/B/C)、若手研究、挑戦的研究、学術変革領域、
特別研究員奨励費など。全分野対象。申請は e-Rad と所属機関経由。「研究計画調書」が中核。
- **JST**:戦略的創造研究推進事業(CREST/さきがけ/ERATO)、ムーンショット、A-STEP(産学連携)、
SPRING/次世代研究者(博士課程支援)など。
- **AMED**:医療分野の研究開発(臨床・橋渡し・基礎医学)。
- **NEDO**:エネルギー・産業技術。
- **民間財団**:各種学術振興財団・企業財団の助成。
- ※ 申請区分・採択率・上限額・間接経費率は制度ごとに異なる。公募要領で確認。
研究計画調書(申請書)の構成
## 申請書に書く要素(科研費の研究計画調書を念頭に)
### 概要・目的(冒頭)
- 学術的「問い」:何を、どこまで明らかにするか
- 背景:当該分野の現状と、これまでの研究で何が分かっているか
- 学術的独自性・創造性:何が新しいか
- 本研究の目的・着想に至った経緯
- 期待される成果と学術的・社会的意義
### 学術的背景・位置づけ
- 問題の重要性
- 現在の知見の空白(ギャップ)
- 本研究が分野をどう前進させるか
- 成功した場合の波及効果
### 研究の独自性・創造性
- 着想・概念の新しさ
- 方法・技術の新しさ
### 研究方法・計画(年次計画)
各課題・各年度について:
- 根拠(なぜこの方法か)
- 予備的データ(あれば)
- 研究デザインと具体的手法
- 期待される結果
- 想定される問題と代替案
- 役割分担とスケジュール
### 研究遂行能力・環境
- これまでの研究実績(researchmap・業績リストと整合させる)
- 設備・体制・連携先
### 人権・安全・倫理への配慮
- 人を対象とする研究/個人情報/動物実験/遺伝子組換え等に該当する場合の対応
- 倫理審査・各種承認の予定
経費の説明(積算)
## 経費区分(科研費等を念頭に)
### 直接経費
- **物品費**:消耗品、設備備品(高額機器は必要性を具体的に説明)、ソフトウェアライセンス
- **旅費**:学会発表、データ収集・調査出張、共同研究者との打合せ
- **人件費・謝金**:研究補助者の賃金、被験者・調査協力者への謝金、文字起こし・翻訳の外注費
- **その他**:論文投稿料・掲載料(APCを含む)、英文校正費、印刷費、機器の保守、運搬費、通信費
### 間接経費
- 科研費等では原則、**直接経費の30%**が間接経費として措置されるのが一般的(制度・年度により異なる)。
研究機関が管理・使用する経費で、研究環境の整備等に充てられる。
- 制度によって間接経費の率・有無・対象が異なるため、**公募要領で必ず確認**する。
(米国のF&A率/MTDC方式は日本の制度と異なるため割愛し、日本の間接経費に置き換えた。)
### 積算の注意
- 設備備品費と消耗品費の区分は機関の経理規程に従う
- 他制度・他機関との重複・経費の不合理な重複は不採択・返還の原因になる
- 年度内執行・繰越のルール(基金/補助金の別)を確認する
投稿戦略
投稿先(ジャーナル)の選定
## ジャーナルの見極め
### 質の指標
- インパクトファクター(Journal Citation Reports。過度に依存しない)
- 採択率
- 査読期間・出版までの期間
- 分野内での評価・読者層
- 索引登録(Web of Science、Scopus、PubMed、J-STAGE、DOAJ 等)
### 適合性の指標
- 扱う範囲(スコープ)との一致
- 読者層の一致
- 論文種別(実証・理論・総説)
- オープンアクセスの経路(下記)
- 国内誌か国際誌か(読者・引用のされ方・キャリア評価への影響)
### オープンアクセス(OA)の経路
- **ゴールドOA** — 完全OA誌で公開。多くはAPC(論文掲載料)が必要(数万〜数十万円超)。
- **グリーンOA** — 購読誌に掲載しつつ、著者最終稿(受理版)を機関リポジトリ(JAIRO Cloud 等)や
J-STAGE、arXiv等に自己アーカイブする。出版社の許諾・エンバーゴ期間を確認する。
- **ダイヤモンド/プラチナOA** — APC不要の完全OA誌。学会・大学・コンソーシアムが支える。
日本では学会刊行のJ-STAGE掲載誌に多い。
- **ハイブリッド** — 購読誌だが、論文単位でAPCを払えばOAにできる。一部の助成方針では非対応のことがある。
- **ブロンズ** — 無料で読めるが正式なOAライセンスがなく、出版社が公開を取り消しうる。
コンプライアンス上は「OAではない」扱いが無難。
### 助成機関のOA方針(日本、2026年時点・要確認)
- 日本では、**公的資金による学術論文の即時オープンアクセス義務化**が段階的に進められている
(統合イノベーション戦略に基づく方針。対象範囲・開始時期は分野・制度で異なる)。
論文本文とエビデンスデータの機関リポジトリ等への登載が求められる方向。
- 科研費・JST・AMED等の各制度がそれぞれOA・データ管理計画(DMP)の要件を定めている。
- **投稿前に、所属機関の図書館・URA、および助成制度の最新の公募要領で要件(対象・エンバーゴ・ライセンス)を確認**する。
- ※ 米国のOSTP Nelson Memo・欧州のPlan S(cOAlition S)は海外制度のため概要のみ。
国際共著や海外助成を受ける場合は、当該助成機関の方針(Plan S等はハイブリッド非対応・CC BY必須等)も併せて確認する。
### 危険なジャーナル(ハゲタカ/predatory)のサイン
- 一方的で過剰な投稿勧誘メール
- 数日で「査読完了」をうたう
- 編集委員の実体が不明
- 主要DB(Scopus/WoS/PubMed/DOAJ等)に未収録
- OAモデルが不明確なまま掲載料を請求
- 雑なウェブサイト
### ジャーナルと研究倫理の確認に使えるリソース
- **Think. Check. Submit.**(thinkchecksubmit.org)— 投稿先の信頼性チェックリスト(日本語版あり)。
- **DOAJ**(Directory of Open Access Journals)— 審査を通ったOA誌の一覧。
- **DOAJ/J-STAGE収録の有無** — 国内誌の信頼性の一つの目安。
- **Journal Citation Reports** — インパクトファクター(Web of Science、有料)。
- **Retraction Watch Database** — 撤回・出版不正の検索可能な記録。著者・誌の確認に有用。
- **COPE**(Committee on Publication Ethics, publicationethics.org)— 編集者・著者向けの倫理ガイドライン。
- **ICMJE**(医学雑誌編集者国際委員会, icmje.org/recommendations)— 著者資格・COI開示・報告基準を定義(医学以外でも参照される)。
- ※ Beall's List(ハゲタカ誌リスト)は2017年に閉鎖。残存ミラーは古いため最新の根拠にしない。
カバーレター(投稿状)のテンプレート
[編集長名] 先生
このたび、拙稿「[完全な題目]」を、貴誌 [誌名] の [論文種別] として投稿いたします。
**概要(2〜3文):**
[何を行い、何が分かったか]
**意義(2〜3文):**
[貴誌の読者にとってなぜ重要か]
**適合性:**
[なぜ他誌ではなく貴誌なのか]
**宣言事項:**
- 本稿は独自のものであり、他誌に同時投稿していません
- 全著者が投稿に同意しています
- [利益相反(COI)の有無]
- [研究資金の謝辞・助成番号]
**推薦査読者(求められた場合):**
1. [氏名、所属、メール] — [専門領域]
2. [氏名、所属、メール] — [専門領域]
3. [氏名、所属、メール] — [専門領域]
**除外を希望する査読者(あれば):**
[氏名] — [簡潔で専門的な理由]
ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます。
[責任著者名]
[職位・所属]
[連絡先]
プレプリントと永続識別子
プレプリントサーバー(査読前原稿を公開し、早く引用されるようにする)
プレプリントは、正式な査読の前に著者が公開する原稿。多くの学術誌がプレプリント公開を認める(むしろ推奨する)方向だが、投稿先の方針は事前に確認する。
| サーバー | 分野 | 備考 |
|---|---|---|
| Jxiv(jxiv.jst.go.jp) | 全分野(日本) | JSTが運営する日本のプレプリントサーバー。和文・英文可。 |
| arXiv(arxiv.org) | 物理・数学・CS・定量生物・経済・統計 | 最古・最大。分野ごとにモデレーション。 |
| bioRxiv(biorxiv.org) | 生物学 | Cold Spring Harbor Laboratory運営。 |
| medRxiv(medrxiv.org) | 医学・健康科学 | 安全性に関わる主張は軽い審査あり。臨床試験結果は事前登録なしに公開しない。 |
| SSRN(ssrn.com) | 社会科学・法・経済・金融 | Elsevier傘下(2016〜)。代替としてSocArXiv(OSF系)を好む層もいる。 |
| PsyArXiv | 心理・行動科学 | OSFホスト。 |
| SocArXiv | 社会学・社会科学 | OSFホスト、Elsevier非依存。 |
| EarthArXiv / EngrXiv | 地球科学/工学 | OSFホスト、コミュニティ運営。 |
プレプリントの利点: 先取権(プライオリティ)のタイムスタンプを早く確保でき、誌掲載の数か月前から引用可能になり、最終査読の前に広くフィードバックを得られる。 ※ プレプリント公開は自発的な選択であり、助成機関のOA義務(査読済み版の公開)とは別物。両方の要件を別個に満たす必要がある場合がある。
永続識別子(PID)— ORCIDを取得し、DOIを使う
- ORCID iD(orcid.org)— 無料の16桁の研究者識別子。出版社・助成機関・所属を横断して 本人を一意に結びつける。多くの主要誌・助成制度で必須。論文・データ・ソフト・申請に紐づける。 日本では researchmap と連携できる(業績管理・科研費申請で利用)。
- DOI(doi.org)— 学術成果に付く永続識別子。誌掲載時に自動付与されるほか、Zenodo(zenodo.org)や 機関リポジトリで、自前のデータ・コード・ポスター・プレプリントにDOIを付けられる。 日本のDOI登録機関として JaLC(Japan Link Center) があり、国内機関・J-STAGEのDOIを管理する。
- ROR(ror.org)— 研究機関の永続識別子。機関名の表記ゆれを助成機関・出版社が名寄せするのに使う。
- researchmap(researchmap.jp)— 国内の研究者総覧。業績・科研費申請・ORCID連携の実務基盤。
研究倫理
倫理面のチェックリスト
## 研究を始める前に
### 人を対象とする研究
- [ ] 所属機関の**倫理審査委員会(IRB相当)**の承認を得たか
- [ ] インフォームド・コンセントの手続きを定めたか
- [ ] 配慮を要する対象(未成年・患者・被災者等)を特定し保護策を講じたか
- [ ] プライバシー・秘密保持の措置があるか
- [ ] データ管理・セキュリティ計画があるか
- [ ] リスクと便益のバランスが妥当か
- ※ 日本では「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」等の関連指針・個人情報保護法を確認する。
### データ管理
- [ ] データ管理計画(DMP)を作成したか(助成制度で必須の場合あり)
- [ ] 安全な保管先を確保したか
- [ ] 共有・アーカイブの方針を文書化したか
- [ ] 保存期間を定めたか
- [ ] 廃棄手続きを定めたか
### 著者資格(オーサーシップ)
- [ ] 貢献の基準を共有したか(ICMJE基準:実質的貢献+起草/改訂+最終承認+説明責任)
- [ ] 著者順を合意したか
- [ ] 全員が著者基準を満たす見込みか
- [ ] 著者基準を満たさない協力者は謝辞に記すか
- [ ] **CRediT分類**(credit.niso.org)で各著者の役割を割り当てたか。
多くの主要誌が要求・推奨。14の標準役割(着想、方法論、ソフトウェア、検証、
形式的分析、調査、リソース、データキュレーション、執筆—原案、執筆—校閲編集、
可視化、監督、プロジェクト管理、資金獲得)。
### 利益相反(COI)
- [ ] 金銭的なCOIを特定したか
- [ ] 非金銭的なCOIを特定したか
- [ ] 開示の方針を定めたか
### 再現性
- [ ] 解析計画をデータ収集前に事前登録したか(**OSF**(osf.io)/**AsPredicted**(aspredicted.org))。
確認的分析と探索的分析を区別し、HARKingを防ぐ。投稿先が**Registered Reports**
(データ収集前にデザインを査読し、結果によらず原則受理する形式)に対応しているか確認する。
- [ ] コードを共有するか(GitHubリリース+Zenodo DOIでバージョン付き・引用可能に)
- [ ] データを共有するか(FAIR原則。機関リポジトリ、Dryad、Figshare、分野別リポジトリ等)
- [ ] 材料・尺度を共有するか
研究不正の回避
## 不正の類型
### 捏造(Fabrication)
- データや結果を作り出すこと
- いかなる状況でも許されない
### 改ざん(Falsification)
- データ・機器・過程を操作すること
- 結論を変えるために都合の悪いデータを選択的に除くこと
- 許容範囲を超えた画像の加工
### 盗用(Plagiarism)
- 他者の文章を出典なしに使うこと
- 自己盗用(自分の既発表を断りなく再利用)
- 言い換えが原文に近すぎる
※ 日本では文部科学省「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」が、
捏造・改ざん・盗用(FFP)を「特定不正行為」と定義する。
### その他の疑わしい慣行(QRPs)
- p-hacking(有意になるまで分析を繰り返す)
- HARKing(結果を見てから仮説を立てたように書く)
- サラミ出版(一つの研究を細切れにして複数論文化)
- ギフト/ゴースト・オーサーシップ
- 結果の選択的報告
学術文章における生成AI(LLM)の利用
LLMによる執筆支援は、2023〜2026年の学術出版で最大の倫理論点。主要な学術誌・助成機関・倫理団体がこの間に方針を出し、いまも厳格化が続いている。以下は最低ラインと考え、投稿前に対象誌の最新の投稿規程と、助成制度の最新方針を必ず確認すること。
一律に禁止されること(2026年時点)
- LLMを著者にすること。 ICMJE、COPE、Nature、Science、Cell、JAMA、Lancet、主要大学出版局等が 明確に禁止。LLMは説明責任・最終承認の要件を満たせない。著者欄ではなく、謝辞または方法・開示文で記す。
- 架空の引用の生成。 LLMは実在しないDOI・ページ番号・著者/題目の組み合わせをもっともらしく生成する。 原稿の全引用は出典に当てて検証する。LLM由来の偽引用は撤回の主要原因の一つ。
- データ・結果・画像の生成。 実験データの合成、図の捏造、得ていない結果を「補完」する行為は研究不正。
- 重要な利用の不開示。 スペルチェック等の些末な利用を超えるLLM利用は開示が求められるのが一般的。 重要な利用を開示しないことは撤回の理由になりうる。
- ※ 日本でも文部科学省・各学会・各大学が学生・研究者向けの生成AI利用方針を公表している。所属機関の方針も確認する。
一般に許容されること(開示を前提に)
- 着想出し・アウトラインづくり
- 文章の推敲・文法修正
- 自分の文章の翻訳
- 解析用コードの生成(明示的なテストを伴う)
- 自分のメモ・記録の要約
- 定型文(カバーレター、倫理審査の文面)の下書き(事実確認し、内容に責任を持つこと)
開示文のテンプレート
多くの誌は、ツール名・バージョン(あれば)・用途を記した方法/謝辞の文を求める。例:
本研究の作成過程で、著者は [ツール名・版(例:ChatGPT、Claude、Gemini)] を [具体的用途(例:序論の文章推敲、第3.2節のクラスタ分析コードの下書き)] に使用した。 使用後、著者は内容を確認・編集し、公表物の内容に全責任を負う。
※ Elsevier、Springer Nature、Wiley、Taylor & Francis、IEEE、ACM 等は各社固有の推奨文言を定めている。対象誌の指定に合わせる。
投稿前の開示チェックリスト
- 対象誌のAI/LLM方針を最新の投稿規程で読んだ(方針は年に数回改定される)
- 助成制度の方針を読んだ(誌より厳しい場合がある)
- 誌の推奨文言で開示文を入れた
- 全引用を手作業で検証した(DOI・著者・ページ・引用文をLLM出力に頼らない)
- 数値・日付・固有名詞をすべて検証した
- 原稿全体を読み直し、LLMでなく自分の論旨・構成が主であることを確認した
- コード・解析にLLMを使った場合、乱数シードを固定して再実行し、報告値が再現することを確認した
検出ツール(信頼性は限定的)
GPTZero、Turnitin AI Detection、Originality.ai 等は、英語非母語話者の文章や正当な人間執筆の技術文に対する誤検知率が高く、軽い編集を施した最新モデルに対する見逃しも多いことが報告されている。Pangram Labs(pangram.com)はより厳密なベンチマークで旧来検出器を上回る傾向があるとされるが、決定的な判定者ではなく、著者がLLM出力を大きく編集した場合は同じ限界を共有する。検出結果は不正認定の唯一の根拠にしてはならず、著者との確認のための「きっかけ」として扱う。
生産性とワークフロー
執筆の習慣
## 続けられる学術執筆
### 日々の執筆習慣
- 毎日同じ時間に書く(習慣化)
- 最小目標から始める(例:まず30分)
- 進捗を記録する(字数・時間)
- 執筆時間を会議・メールから守る
### 大きなプロジェクトの進め方
1. できるだけ小さなタスクに分解する
2. 各部品に締切を設ける
3. 執筆ブロックを定期的に確保する
4. 余裕(バッファ)を入れる
5. 早めに・繰り返しフィードバックを得る
### 行き詰まりの打開
- 一番書きやすい節から始める
- 「ひどい初稿」を許す(完璧を求めない)
- 引用・データは仮置き(プレースホルダ)にして先に進む
- 同僚に口頭で説明してみる
- 環境を変える
- アウトライン・構成に戻る
研究者向けのツール
| 目的 | ツール |
|---|---|
| 文献管理 | Zotero(推奨:オープンソース、複数端末同期)、Paperpile(Webベース、Google Docs連携)、EndNote、Mendeley Reference Manager(Web/クラウド版が現行;旧Mendeley Desktopはレガシー)、RefWorks。新規利用者はZoteroが扱いやすい。 |
| 業績・識別子管理 | researchmap、ORCID(双方を連携させる) |
| 執筆 | Word、Overleaf(LaTeXの共同編集)、Scrivener、Typst(新しいLaTeX代替) |
| 共同作業 | Google Docs、Overleaf、HedgeDoc |
| バージョン管理 | Git / GitHub / GitLab(真のバージョン管理)。Wordの変更履歴は共同編集であってバージョン管理ではない(分岐・統合・履歴改変・原子的コミットを欠く)。 |
| タスク管理 | Todoist、Notion、Trello |
| 集中 | Forest、Freedom、Cold Turkey |
| 解析 | R、Python、SPSS、Stata、SAS、NVivo(質的)、Julia |
| 可視化 | R/ggplot2、Python/matplotlib + plotly、Observable、Tableau |
| LLM支援執筆 | 利用前に上記「生成AI(LLM)の利用」節の開示要件を確認すること。 |
出典・ライセンス(帰属表示)
本スキルは research-toolkit(claude-skills-journalism、by Joe Amditis, MIT License, © 2025 Joe Amditis,
https://github.com/jamditis/claude-skills-journalism )の academic-writing スキルを
原典の構成(研究設計・文献レビュー・IMRaD・査読対応・研究費・投稿戦略・プレプリント/識別子・研究倫理・生成AI利用・ワークフロー)に沿って日本語化し、
米国固有の制度(NSF/NIH、F&A率、OSTP Nelson Memo、米国データベース等)を日本の学術環境(科研費・JST・AMED、J-STAGE・CiNii Research・国立国会図書館・Jxiv・JaLC・researchmap、文部科学省の研究不正・OA方針等)に再構成したものです。
日本に相当物のない米国固有の参照は概要のみとし、または割愛しています。調査報道で学術文献を扱う記者向けの観点を加えています。
原典の著作物本文は転載していません。原作者の公認・推奨を受けたものではありません。
MIT ライセンスに従い利用しています。
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